「承認図方式」の版間の差分

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自動車メーカーが基本仕様を提示し、それに基づいて部品メーカーが部品を開発し、設計図を作成し、自動車メーカーの承認を受け、部品を製造する方式を承認図方式と呼ぶ。日本の自動車業界における外注調達部品の二つに大別される開発方式のうちの一つ。もう一つは[[貸与図方式]]と呼ぶ。自動車メーカーが外部から調達する部品費用の約60%が承認図方式に基づくのに対し、米国では20%以下、欧州では約40%と言われ、欧米では[[貸与図方式]]が大きな部分を占める。
自動車メーカーが基本仕様を提示し、それに基づいて部品メーカーが部品を開発し、設計図を作成し、自動車メーカーの承認を受け、部品を製造する方式を承認図方式と呼ぶ。日本の自動車業界における外注調達部品の二つに大別される開発方式のうちの一つ。もう一つは[[貸与図方式]]と呼ぶ。自動車メーカーが外部から調達する部品費用の約60%<ref>JAMA MAGAZINE 1998年8月号「日本の自動車と自動車部品産業」</ref>が承認図方式に基づくのに対し、米国では20%以下、欧州では約40%と言われ、欧米では[[貸与図方式]]が大きな部分を占める。


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日本と欧米の間にこうした格差が生じた背景には、欧米の部品メーカーの設計・開発能力は自己努力によるものであって、自動車メーカーの指導ないし支援の形跡は見当たらない。これに対して後発の日本では、「仕様構想図(スペック・テンダー)方式」といって、自動車メーカーが詳細な仕様構想図を提示し、部品メーカーがこの案件を忠実に守って設計・開発を実現するといった、両者の緊密な共同作業方式に特徴がある。日本の自動車産業が後発的立場にありながら、短期間に部品メーカーの設計・開発力を向上させることができた背景には、このような日本独特のスペック・テンダー方式の存在が指摘できる。
日本と欧米の間にこうした格差が生じた背景には、欧米の部品メーカーの設計・開発能力は自己努力によるものであって、自動車メーカーの指導ないし支援の形跡は見当たらない。これに対して後発の日本では、「仕様構想図(スペック・テンダー)方式」といって、自動車メーカーが詳細な仕様構想図を提示し、部品メーカーがこの案件を忠実に守って設計・開発を実現するといった、両者の緊密な共同作業方式に特徴がある。日本の自動車産業が後発的立場にありながら、短期間に部品メーカーの設計・開発力を向上させることができた背景には、このような日本独特のスペック・テンダー方式の存在が指摘できる。
2006年の研究<ref>自動車部品産業における取引パターンの発展と変容 2006年6月 東京大学ものづくり経営研究センター</ref>では、全体の69.5%が承認図面であり、委託図面が16.3%、貸与図面が9.9%、残りは市販品などである。カテゴリ別の傾向としては、電子・電気部品において部品メーカーが開発を手掛ける割合が高く(承認図面)、逆に、機械加工部品において割合が低く(貸与図面)なっている。
== 出展 ==
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2015年7月30日 (木) 06:08時点における版

自動車メーカーが基本仕様を提示し、それに基づいて部品メーカーが部品を開発し、設計図を作成し、自動車メーカーの承認を受け、部品を製造する方式を承認図方式と呼ぶ。日本の自動車業界における外注調達部品の二つに大別される開発方式のうちの一つ。もう一つは貸与図方式と呼ぶ。自動車メーカーが外部から調達する部品費用の約60%[1]が承認図方式に基づくのに対し、米国では20%以下、欧州では約40%と言われ、欧米では貸与図方式が大きな部分を占める。


日本と欧米の間にこうした格差が生じた背景には、欧米の部品メーカーの設計・開発能力は自己努力によるものであって、自動車メーカーの指導ないし支援の形跡は見当たらない。これに対して後発の日本では、「仕様構想図(スペック・テンダー)方式」といって、自動車メーカーが詳細な仕様構想図を提示し、部品メーカーがこの案件を忠実に守って設計・開発を実現するといった、両者の緊密な共同作業方式に特徴がある。日本の自動車産業が後発的立場にありながら、短期間に部品メーカーの設計・開発力を向上させることができた背景には、このような日本独特のスペック・テンダー方式の存在が指摘できる。

2006年の研究[2]では、全体の69.5%が承認図面であり、委託図面が16.3%、貸与図面が9.9%、残りは市販品などである。カテゴリ別の傾向としては、電子・電気部品において部品メーカーが開発を手掛ける割合が高く(承認図面)、逆に、機械加工部品において割合が低く(貸与図面)なっている。

出展

  1. ^ JAMA MAGAZINE 1998年8月号「日本の自動車と自動車部品産業」
  2. ^ 自動車部品産業における取引パターンの発展と変容 2006年6月 東京大学ものづくり経営研究センター